今回は歯性上顎洞炎についてお話ししてみようと思う。
根管治療を主訴に来院する患者さんの中には、この上顎洞炎を併発している患者さんも多い。
上顎洞炎とは、副鼻腔の一つである上顎洞という場所に炎症が起きている状態をいう。
ひどくなると、「蓄膿症」とも言われる。
原因は大きく「鼻が原因のもの」と「歯が原因のもの」に分かれる。
主な症状としては、以下のようなものである。
- 鼻づまり
- 黄色い鼻水が出る
- においを感じにくくなる
- 頭痛
- 悪臭
- 鼻水がのどの奥に流れる
炎症が軽度であれば、無症状の患者さんもかなり多いと言えるだろう。
歯が原因のものであれば、歯科で対応が可能である。
患者さんの中には、耳鼻科から歯の治療を勧められて来院する方もいる。
上顎の奥歯に根尖性歯周炎が生じると、その合併症として歯性上顎洞炎を併発することがある。
上顎の奥歯の歯根は、上顎洞と近接することが多く、そのため炎症が波及してしまうのである。
診断にはレントゲン検査に加え、CT検査が非常に有効だ。
根尖性歯周炎が原因で上顎洞炎を起こしている場合、治療の選択肢は2つだ。
①根管治療 or 外科的根管治療(歯根端切除術)
②抜歯
である。
原因である歯を抜歯すれば、自然と上顎洞炎も消失する。
歯を残して機能させようとすると、我々の出番となる。
(治療前のCT)
歯根先端の周りに膿が溜まり、周りの骨が溶けている。
また、矢印で示す上顎洞の粘膜が、腫れて肥厚している状態である。
(治療後のCT)
歯の周りの膿が無くなり、肥厚していた上顎洞の粘膜の肥厚も引いているのがわかる。
このように根尖性歯周炎が治ると同時に、歯性上顎洞炎が治癒することになる。
鼻の症状や違和感があっても、このように歯が原因となっていることもある。