Doctor's Blog

院長ブログ

症例;右上8→右下6への、自家歯牙移植

今回の症例は、親知らずを使った自家歯牙移植のケースをご紹介しよう。

当院では根管治療を専門としているが、自家歯牙移植も扱っている。

 

患者さんは30代女性。

主訴は「右下の歯茎が腫れて、膿が出てくる。噛むと痛みもある。他院では抜歯してインプラントにしないといけないと言われたが他に選択肢がないのかみてほしい。」であった。

 

口腔内を見ると右下6番にフィステルがある。

 

(術前のレントゲン;右下6)

 

 

レントゲンでは大きな骨吸収を認めた。

マイクロスコープによる直視検査で歯根破折を認めたため、残念ながら抜歯という診断となった。

 

患者さんはどうしてもインプラントに抵抗があるという。

まだ30代ということもあり、インプラントの代替案として、右上の親知らずを利用した歯牙移植を提案した。

自分の歯を使えるのであれば、そちらの方が良いということで、歯牙移植を進めることとなった。

 

(術前のCT;右下6 & 右上8)

 

 

歯牙移植を行うにあたっては、親知らず(ドナー側)の歯根の形が非常に重要である。

根が曲がっていたり、3根が開いているような歯根形態だとドナー歯には適さない。

今回は術前CTによる検査で、適合歯と判断した。

 

(術直後のレントゲン)

 

 

移植手術自体は1時間もかからずに終了する。

 

移植歯は、歯根膜をできるだけ温存することが最も大切なポイントだ。

・歯根膜を傷つけない

・歯根膜を乾燥させない

ために、スピーディーに処置を行う必要がある。

 

移植をした歯は、抜歯をすると歯の神経(歯髄)が死んでしまうため、根管治療が必要となる。

 

術後1ヶ月の時点で、経過は問題なかったため、根管治療を行った。

 

(根管治療後のレントゲン)

 

 

根管治療は一回法で行い、その後補綴治療が行われた。

 

(術後1年のレントゲン)

 

 

1年経ち、症状も無く、しっかり使えているということであった。

このまま長期間、持ってくれることを期待したい。

 

・患者さんの年齢(中高齢以降だと、生存率は下がる)

・移植歯の状態(歯根形態や虫歯の罹患度)

 

この2点がクリアできるのであれば、

自家歯牙移植は、歯を失った場合の有効な選択肢だと言えるだろう。