よくある質問

精密根管治療

マイクロスコープを使えば、成功率は高くなりますか?

マイクロスコープはいわば巨大な虫眼鏡であり、あくまで物を拡大して見るための道具です。
治療の精度を上げる重要な役割を果たしていることは間違いありませんが、マイクロスコープを使えば良いという訳ではありません。
ラバーダムをはじめとした無菌的処置や、専門的な知識・技術がなければ成功率は高くなりません。

根管治療で治らない場合はどんな時ですか?

根の病気(根尖性歯周炎)は、口の中の細菌が歯根に感染することによって起こります。
患者さん自身の「免疫」と歯根に感染した「細菌」のパワーバランスによって、治るかどうかが決まります。
根管治療によって細菌の数が減り、「免疫が優位な状態」になれば、病気は治癒に向かいます。
しかし根管治療しても細菌の数が十分に減らず、「細菌が優位な状態」が続けば、病気が治らないこともあります。このような場合は、追加治療として歯根端切除術が必要になります。

麻酔はするのですか?治療は痛いですか?

根管治療時は必ず局所麻酔を行いますので、治療中に痛みはありません。
また、麻酔自体も極力痛くないよう、様々な配慮を行っております。
しかし、根管治療の後に2−3日程度、「術後痛」が出ることがあります。
病気が悪化するから出るわけではなく、治療の刺激による一過性のものです。患者さんによって程度に差はありますが、処方する鎮痛剤で対処できます。

神経を取らないといけないと言われたのですが、残せますか?

神経(歯髄)を取らないといけない状態は、以下のような場合です。

  1. 神経に細菌が感染し、既に神経が死んでしまっている状態
    このまま放置すると歯根周囲に膿ができ、状況がさらに悪化します。膿ができてしまうと、膿が無い状態と比べて根管治療の成功率もやや下がってしまいます。
  2. 神経は生きているが、細菌感染により神経が大きくダメージを受けている状態
    神経が大きくダメージを受けると、元の正常な状態に戻れず、①の状態に移行していきます。
    「自発痛」といって、「何もしなくても歯がズキズキ痛い」というのが、この場合の典型的な痛みです。
    しかし、痛みもなく進行するケースもあるため、診断がとても重要です。

どちらの場合においても、歯を守るためには、早期治療が望ましいです。

今までは神経の治療のために、何回も通院していました。治療回数が一回で大丈夫なのでしょうか?

治療回数が「1回の場合」と「2回以上の場合」を比較した研究があります。
まだ専門医でも意見が分かれるところでもありますが、ほとんど治療成績に差がないという研究報告が多くあります。
マイクロスコープを使用した環境で、見える汚れをしっかり取り切れば、私も1回の治療で十分という考えの元で治療を行なっています。
症例を見て頂ければ分かりますが、ほとんどの治療は1回の治療で行い、治癒しています。
何ヶ月も治療回数をかければ治るというものでないと考えております。

歯が割れているかもしれないと言われましたが、治療できますか?

歯根が完全に割れてしまっていれば、残念ながら治療することは難しいです。
しかし、割れているかどうかはレントゲンでも検出されないことが多く、診断が難しい場合もあります。
確定診断のためには、「割れた部分を直接見て確認する」しか無いのです。当院では割れた部分をマイクロスコープで確認・写真撮影し、それを用いて患者さんに説明を行うようにしています。
割れた部分が直接確認できていないのに、「根管治療しても治らないから、歯が割れているかもしれない。だから抜歯しましょう。」というのは、時期尚早かもしれません。
注)割れている位置によっては、マイクロスコープでも見えない事もあります。

膿が大きいと、根管治療では治らないのですか?

膿が大きくても、根管治療だけで治癒することも多くあります。(症例123591522を参照下さい)
しかし、膿が小さい場合と比較すると成功率がやや低くなるという研究報告もあります。根管治療で治癒しない場合は、追加治療として歯根端切除術が必要です。

根管治療は何回でもやり直しできるのでしょうか?

根管治療は何度もやり直しできるわけではなく、2~3回が限界です。
その理由は治療の度に歯が削られ、ダメージが蓄積されていくからです。ダメージが蓄積されていくと、歯が薄くなったり、割れやすくなったりします。
成功率という点から見ると、やり直しの治療(再治療)と比較して、初めて手をつける治療(初回治療)の方が成功率が高いことが分かっています。
最初からきちんとしたコンセプトの元で治療を受けることが大切です。

歯根端切除術

麻酔、手術時間、痛みや腫れについて教えてください。

麻酔は局所麻酔で行います。虫歯治療の際に使用するものと同じです。
手術時間は60分〜90分程度です。
日帰りで行えます。全身麻酔や静脈内鎮静では無いので、車の運転も差し支えありません。
手術後2〜3日の間は多少の痛みや腫れはありますが、処方するお薬で抑えることが可能です。

膿(嚢胞)が大きいから抜歯と言われましたが、手術は可能ですか?

はい、膿が大きくても手術は可能です。
溶けてしまった顎骨が回復するには時間がかかりますが、膿が大きいから抜歯ということにはなりません。
症例148をご参照ください。

手術の前に、必ず根管治療を行わなければならないのですか?

いいえ、必ず行う訳ではありません。
歯根端切除術のみで、対応が可能な場合も多くあります。
当院では逆根管形成・逆根管充填を必ず行いますので、これにより歯根の中の汚染を取ることが可能です。
ただし、下記のような場合、手術前に根管治療が必要になります。

  • 一度も根管治療をされていない場合
  • 根管治療の質が著しく悪い場合
奥歯でも手術はできますか?

はい、可能です。
奥歯(小臼歯、大臼歯)の手術は見えにくく難しいため対応していない病院もありますが、当院では対応しています。
ただし、上顎では上顎洞(副鼻腔)の状態、下顎ではオトガイ神経の位置に注意が必要です。術前にCT検査を行い、手術可能かを診断します。

  • 上顎の第一大臼歯(6番)の口蓋根(内側にある根)
  • 上顎、下顎の第二大臼歯(7番)

は歯根端切除術では対応できません。
第二大臼歯は意図的再植術(一度抜歯を行い、口腔外で歯根端切除し、再度抜いた場所に戻す手術)で対応できることがあります。

病院選びのポイントは?

歯根端切除術を受ける際、主治医に確認したほうが良い事項は次の5点です。

  1. マイクロスコープやライト付き拡大鏡を使用していますか?
    →使用しないと、手術の肝心なところが見えません。
  2. 逆根管形成・逆根管充填を行なっていますか?
    →現在の術式において、必須です。
  3. 手術後の経過を診てくれますか?(1年後くらいまで)
    →1年間ほど手術の経過を診ないと、成功したかどうか分かりません。
  4. 成功率はどれくらいですか?
    →歯根の先を切るだけの古い術式だと、50%程度です。
  5. 手術時間はどれくらいですか?
    →30分程であれば、歯根の先を切るだけの古い術式の可能性があります。
歯根端切除術で治せない場合はどんな時ですか?
  • 歯根に大きく亀裂が入ってしまっている場合
  • 重度の歯周病を併発している場合
  • 感染歯質・根管外の感染が広範囲に広がってしまっている場合

このような場合は、歯根端切除術を行なっても治癒しない(もしくは成功率が低くなってしまう)ため、適応外となります。

一度歯根端切除術を受けた後、膿が再発しました。再手術はできますか?

再発の原因が特定でき、解決策が分かれば再手術可能です。
再発原因のほとんどが、「歯根の先端を切るだけの古い術式が行われていること」にあります。この場合はきちんと逆根管形成・逆根管充填すれば、問題を解決することができます。
症例12をご参照ください。
しかし、歯根の大きい亀裂が原因の場合は、手術の適応外となります。
なぜ前回の手術がうまくいかなかったのか、きちんと分析することが重要です。

持病がありますが、手術可能ですか?

高血圧や糖尿病などがあっても、コントロールできていれば手術は可能です。
血液がサラサラになるお薬を服用している方、骨粗鬆症でビスホスホネート製剤などのお薬を服用している方は手術ができないことがあります。
いずれにしても、医科の主治医の先生と連携を取り、手術可能かを判断致します。