今回の症例は、右上1番。
歯根端切除術を行った症例である。
患者さんは40代女性。
主訴は「前歯の歯茎が腫れて、痛みがある時がある。過去にセラミックのブリッジを入れている。治療できるのか、歯を残せるのか、見てほしい。」であった。
話を聞くと、数年前に前歯のブリッジを入れたとのこと。
メタルセラミックス(メタルボンド)のブリッジが前歯に装着されている。
歯ぐきが腫れて、ブヨブヨする感じがするそうだ。
ブリッジを作った時に、根管治療も行ったということだった。
レントゲンを見てみよう。
(術前レントゲン、CT)
打診(+)、咬合痛(±)、根尖部圧痛(+)
根尖部に大きめの病変を認める。
CTで確認すると鼻腔底直下にまで及ぶことがわかる。
治療方法は2つある。
根管治療か、歯根端切除術かだ。
①根管治療の場合、ブリッジや土台も、全て壊して除去する必要がある。
ブリッジも作り替えになってしまうため、手間も、費用もかかる。
再治療ケースなので、根管治療の成功率は70%程度となる。
治らなかった場合は、結局外科治療(歯根端切除術)をしなければならない。
②最初から歯根端切除術をする場合は、ブリッジはこのままの状態で使用可能だ。
前歯の歯根端切除術は、成功率も90%と高い。
逆根管治療も行うので、良好な予後が期待できる。
上記を選択肢を説明し、患者さんは外科治療(歯根端切除術)を選択した。
手術は1時間ほどで終了した。
(術直後のレントゲン、CT)
逆根管充填も問題ない。
なお、骨補填剤は使用していない。
ここから3ヶ月毎に、経過を見ていった。
(術後3ヶ月のレントゲン、CT)
(術後9ヶ月のレントゲン、CT)
術後9ヶ月の時点で、骨欠損部の骨は完全に再生している。
治療前にあった症状も、全て消失している。
患者さんも歯を残せたことを喜んでおられた。
歯や被せ物の状態によっては、このように歯根端切除術だけで治療を行うことができる。
外科治療に精通してなければ、歯内療法の問題を解決することは難しい。
同じような悩みを持っている方の参考になれば幸いである。