今回は意図的再植のケースをご紹介しよう。
患者さんは20代女性。
主訴は「右上の歯が痛い。他院で根管治療をしているが、症状が全然よくならない。そこではもう残すことは難しいため、抜歯をしないといけないと言われた。何とか残すことはできないか相談したい。」であった。
当院では、このような他院で治療して治らないケースのご相談が非常に多い。
口腔内を見ると、右上7番が仮封してあり、治療途中のようだ。
打診(+)、咬合痛(+)、歯周ポケットは正常範囲であった。
レントゲンを見てみよう。
(術前のレントゲン、CT)



大きな根尖病変が認められる。
ステンレスファイルで大きく歯を削ったせいで、根尖部に穿孔が見られる。
また、頬側部にも穿孔を認め、そこにも病変ができている状態だ。
「穿孔」とは、簡単に言えば「歯を削り過ぎることで、間違って穴を開けてしまうこと」である。
患者さんは歯の保存を強く希望されている。
この状態で再治療を行なっても、望める成功率は40%程度しかないため、
治療は意図的再植術(生存率は80%)を提案した。
このような歯を保存する時は、「根尖病変が治ることと、治療した歯が長持ちすることは別であること」を患者さんにはご理解頂かないとならない。
歯は削られた分だけ、割れやすくなる。そして、歯は決して再生できない。
我々専門医であっても、削った歯を元に戻すことはできないのである。
患者さんが同意されたため、治療が行われた。
(意図的再植後のレントゲン、CT)



歯根破折もなかったため、逆根管治療を行った。
根尖部及び穿孔部はバイオセラミック材料にて修復し、再植した。
レントゲン的な仕上がりには問題ない。
あとは経過観察を続けていく。
(術後1年のレントゲン、CT)



あれだけ大きかった病変は消失し、骨も完全に再生している。
完治と言っていいだろう。
(術後3年のレントゲン)

被せ物も入り、安定して機能している状態だ。
いかがだろう?
諦めなければ、このように一見すると保存が難しい歯でも、治癒に導ける。
できるだけ長く機能して欲しいが、患者さんの年齢を考えると、人生のどこかでダメになる日が来るかもしれない。
それでも、今回の治療で大きく吸収していた骨が再生しているため、もし将来インプラントが必要になった時に、容易に行うことができるだろう。
歯を残すだけでなく、失った再生させることができる、歯内療法のもう一つの大きな側面であるいえる。