今回は歯を残せるかどうかの基準について述べてみたい。
まず歯を残せるかどうか、つまり抜歯をする基準というには「そのクリニックによって大きく異なる」ということを患者さんは知っておいて欲しい。
患者さんの中には「何で同じ歯医者さんなのに、歯を残す基準が違うの?」と思う方も多いだろう。
なぜか?
それはひとえに歯科医師の専門性、得意な治療、考え方によるところが大きい。
根管治療においては、特にその傾向が強いと言える。
歯内療法が得意な先生なら歯を残す治療を提案するが、インプラントが得意な先生なら抜歯してインプラントを提案する。
根管治療は多くの歯科医師にとって、正直面倒くさい治療だ。
抜歯してインプラントにした方が手っ取り早い、と考える歯科医師すらいるのが現状である。
歯内療法の専門医が考える抜歯の基準としては
①歯根破折
歯の根がヒビが入ったり、割れている場合。
②重度の歯周病
根の病気と別に、歯周病が重度な場合。
③骨縁下う蝕
虫歯が骨の下まで進行した場合。
上記3つの場合は、抜歯はやむを得ない。
最近相談に来られる患者さんで、まだ全然歯が残せる状態でも「抜歯→インプラント」を勧められたという方もいた。
この左上7番のどこに、抜歯する理由があるのだろうか?
しかも、まだ20代女性の患者さん…
流石にこれを抜歯してインプラントはやり過ぎだろう。
根管治療を行い、問題なく保存した。
インプラントは確かに良い治療だ。歯を失った時の第一選択と言っていい。
問題はその使い方だ。
何でもかんでも、抜歯してインプラントに置き換えるのは間違っている。
今回の例は極端ではあるが、本当に歯科医師によって抜歯の判断基準はまちまちである。
抜歯の理由に納得できなければ、一度根管治療を得意とする先生に相談してみても良いかもしれない。