左上2番の治療。今回は歯根端切除術のケースを紹介しよう。
患者さんは高校生、男性。
主訴は「左上が腫れることがあり、たまに痛みも出る。他の医院で根の周りの膿が大きいから治療することは難しいと言われた。なんとか残すことはできないか?」であった。
(治療前のレントゲン、CT)
かなり大きな骨吸収がある。
打診(+)、咬合痛(+)、根尖部圧痛(+)、歯周ポケット正常。
まだ年齢も若いため、本人も保護者も何とか残したいとのことであった。
前回の治療の際、ラバーダムは使用していないそうだ…
歯周ポケットは正常なことから、保存治療を試みることとなった。歯根破折も疑われるケースであるので、もし破折があった場合には保存は不可能となる。
・根尖の変位(トランスポーテーション)が起こっていること
・嚢胞性疾患の可能性
などを考慮し、「根管治療に加えて、歯根端切除術」も行う治療計画を提案した。
根管治療と歯根端切除術合わせて、治療時間は2時間ほどで終了した。
(術後のレントゲン、CT)
逆根管充填材にBCシーラーとパテを使用するようになってから、歯根端切除術の処置時間が短くなった。
ちなみに骨補填材は一切使用していない。
治療中に歯根破折は認めなかったため、いったんこの状態で経過観察を行なっていく。
そして、治療後9ヶ月。
(治療後9ヶ月後のレントゲン、CT)
あれだけ大きかった骨の欠損部位に、骨の再生が見られる。
唇側からの骨開窓部も含めて、完治していると言えるだろう。
適切な歯根端切除術もこのように歯を残し、失った骨を再生させることができる。
何度も言うが、「膿が大きい=抜歯」ではないのである。