今回は再根管治療のケースをご紹介しよう。
患者さんは20代女性。
主訴は、「歯茎から膿が出ている。他院で膿が大きいから、治療しても治らないかもしれない。その場合は抜歯をしないといけなくなると言われた。できれば歯を残したい。」であった。
口腔内の状態は、左上5番に
打診(+)、咬合痛(+)、頬側歯肉にフィステル(+)
レントゲンを見てみよう。
(術前レントゲン、CT)
左上5番に根尖病変がある。
根尖部の頬側骨が吸収しており、上顎洞底部の骨が根尖病変によって押し広げられている。
ここで考えないといけないのは、再根管治療をした場合の成功率である。
根尖病変がある場合の、再根管治療の成功率は70%程度である。
しかしこれは平均値であるため、再根管治療の場合は、もう少し個別に検討する必要がある。
今回のように、前医の治療で根尖部をほとんど触っていないような場合は、80%程度の成功率が見込める。
初回治療とほとんど一緒であると言える。
そして、もし根管治療が奏功しなかった場合は、歯根端切除術を追加で行う必要が出てくる。
歯根端切除術の成功率は90%程度であるので、二つの治療があれば、概ね歯を保存できる可能性が高い。
上記を患者さんに伝え、まず再根管治療を行うこととなった。
(治療後のレントゲン)
治療は一回法で終了した。
処置時間は1時間程度である。
1週間後にはフィステルが消失したため、しばし経過観察とした。
患者さんの都合もあり、約1年後の経過観察となった。
治療した箇所はどうなっただろうか?
(治療後のレントゲン、CT)
根尖病変と、全ての症状は消失した。
大きく欠損していた、頬側骨の吸収も含めて、骨の再生を認める。
完治と言えるだろう。最終補綴に移行して問題ない。
今回は外科治療に移行せず、再根管治療のみで治癒した。
もちろん、全てのケースでこのようにいく訳ではない。
「治療しても治らないかもしれない」という説明では、患者さんも不安になるだろうし、治療をしようという気持ちにはならないだろう。
自信を持って、治療の見込みや成功率を伝えることができるかどうかが、
専門家としての責務であると考える。