今回も前回に続き、石灰化根管の治療のケース。
患者さんは60代男性。
主訴は「歯ぐきが腫れて、膿が出てくる。前に治療した際に、今度悪くなるようであれば抜歯になるだろうと言われていた。」である。
左上6番の頬側部にフィステルがある。
数ヶ月前から、そこから膿が出てくるということであった。
(術前のレントゲン)
症状は打診(+)、咬合痛(+)、根尖部圧痛(+)。
MB根が石灰化しており、前回も治療できなかったのであろう。
レントゲンで根管が全く見えない場合、根管は閉鎖していることが多い。
患者さんとのカウンセリングの結果、まず再根管治療を行い、それで治らなければ歯根端切除術を行うという方向となった。
(根管治療後のレントゲン)
結果は、やはりMB根を治療することは不可能だった。
マイクロスコープ下でも根管を発見することはできず、閉鎖している状態だった。
このように、根管治療にはそもそも限界があるということを、知っておかなければならないだろう。
根管治療後もフィステルは消失しないため、追加処置として歯根端切除術を行った。
(歯根端切除術後のレントゲン)
術後のレントゲンで、MB根に逆根管充填されているのがわかる。
そう、石灰化根管で歯冠側から根管治療はできなくても、逆根管治療を行うことは可能なのである。
大臼歯の歯根端切除術は難易度が高いし、手術に慣れていないと時間もかかる。
そのため手を出さない先生も多いが、この治療により保存できる歯がかなり増えるため、その恩恵は大きい。
(術後9ヶ月のレントゲン)
術後9ヶ月経ち、いかなる症状もない。
もちろんフィステルも消失している。
根尖病変は消え、歯槽骨が完全に再生しているのがわかる。
外科的な治療をオプションとして持っているかどうか、これが歯を残せるかどうかの大きな分かれ道だと言えるだろう。