Doctor's Blog

院長ブログ

症例;1年間かけた根管治療に意味はあったのか?

今回は他院にて、1年以上根管治療を行っていたという症例をご紹介しよう。

 

患者さんは40代女性。

主訴は「他院で根の治療を1年くらい行っているが、よくならない。痛みも続いている。治療が可能なのか相談したい。」ということであった。

 

以前からこのブログでもお伝えしているように、我々専門医の根管治療は1−3回で終了する。

延々と数ヶ月も、ましてや1年以上治療することはない。

 

部位は右上3番。レントゲンを見てみよう。

打診(+)、咬合痛(+)、根尖圧痛(+)

 

(術前のレントゲン、CT)

 

 

根管治療のやり過ぎで、内部が相当削られている。

根尖の本来の形が破壊され、唇側に穿孔している。

手用ファイルでゴリゴリと、#100番くらいまで拡大したのだろう…

 

これを再根管治療して治癒するだろうか?

治癒は見込めないだろう。

治療は歯根端切除術の一択である。

 

専門医の1番の強みは、このような「術前の診断」ができることである。

治療の成功率を予め予測し、治療計画を提示することができる。そして、それは経験だけではなく、科学的根拠に基づくものでなければならない。

もちろん根管治療も、外科的治療も含めてだ。

 

歯根端切除術と支台築造を行なった。

 

(術後のレントゲン、CT)

 

 

たった1日で治療が終了したことに、患者さんは驚いていた。

 

この後、仮歯を入れて数ヶ月経過をみていく。

根の治療は、必ず経過観察を行わなければいけない。

治癒したか判定するには、「時間」と「レントゲン」が必要だからだ。

 

(術後1年経過のレントゲン、CT)

 

 

症状も無くなり、無事被せ物も入っている。

手術した部位には骨の再生を認め、完治と言えるだろう。

 

根管治療は時間をかければ良いものではないということが、よく分かる症例だと思う。

 

長期間の根管治療でお悩みの方の、参考になれば幸いである。