今回は意図的再植術のケースをご紹介しよう。
そもそも意図的再植術とはどんな治療なのか?
簡単に説明すると、
①まず該当歯を抜歯する
②口腔外で、歯根端切除術ならびに逆根管治療を行う
③その後、該当歯を元の抜歯した穴に戻す
といった治療である。
基本的に根管治療だけで治らない場合は、歯根端切除術を追加で行うが、「歯根端切除術が適応でないケース」が存在する。
・上下7番の歯
・根尖とオトガイ神経が近接している
などだ。
今回のケースは、上記の根尖とオトガイ神経が近いケースだ。
患者さんは40代女性。
主訴は「他院で根管治療したが、噛むと痛みがあるので、なんとかしたい。」である。
(術前のレントゲン、CT)
打診(+)、咬合痛(+)
根尖病変も大きく、前医により根尖が破壊されている状態である。
根管治療では高い成功率が見込めないケースのため、意図的再植術を提案し、同意された。
(術後のレントゲン、CT)
治療は1時間もかからずに終了する。
この治療のポイントは、口腔外での操作時間をできるだけ早く行うこと。
歯根膜(歯根表面の細胞)の活性を落とさないためだ。
BCシーラーとパテは、逆根管充填材としてここでも活躍する。
戻した歯は、およそ1ヶ月で生着する。
(術後9ヶ月のレントゲン、CT)
いかなる症状もなく、被せ物を入れて快適に噛める状態だ。
周囲の骨も完全に再生しているのがわかる。
「抜いた歯を戻すなんてそんなことできるの?」と思う方もいるでしょう。
適応症であれば、きちんと治るのです。