今回の症例は、過去に歯根端切除術を受けたが、また歯茎から膿が出てきたというケースをご紹介しよう。
患者さんは50代男性。
主訴は「前歯の歯茎から膿が出る。2年ほど前に、他院で根の先を切る手術をしてもらった。違和感はずっと残っていたが、最近になって膿が出てきた」である。
レントゲンを見てみよう。
(術前のレントゲン、CT)
上顎1、2番に根尖病変を認める。根尖相当部が腫脹し、フィステルも形成している状態だ。
2本とも、ジルコニアブリッジの支台歯となっている。ブリッジを入れた後すぐに、症状が出たらしい。
高額な自費の被せ物をするのであれば、根管治療も問題がない状態で入れてあげたいものだ。
過去に歯根端切除術をしたようだが、レントゲンを見ると、失敗した原因が何点かある。
中でも1番の理由は、「根の先を一部切除しただけであり、逆根管治療が全く行われていない点」である。
当院にはこの患者さんのように、過去に歯根端切除術をしたが、再発したと言って来院する方が多い。
ほとんどの場合が、このように逆根管治療がされていない。
以前にもブログで書いたことがあるが、いまだにこのように逆根管治療を伴わない、根の先を切るだけの治療を行う病院がある。
ほぼ全てのケースで、治癒はせず、再発するだろう。
根尖病変は根の先の膿を除去すれば治るという、誤った考えを持ったドクターがいまだに存在する。
今回も治療法は、歯根端切除術のやり直しを行うこととなった。
(治療直後のレントゲン、CT)
逆根管治療は、下記のような超音波器具を使って根管治療を行う。
1990年代にDr.Gary Carrから始まった治療法で、すでに30年近く経っている。この画期的な超音波チップがなければ、数多くの歯が抜歯となっていただろう。
昔は長さが3mmの器具しかなかったが、今は長さが9mmまであるため、歯の奥までしっかり清掃することが可能となった。
(術後9ヶ月のレントゲン、CT)
レントゲンでは根尖部に骨の再生を認める。
フィステルも消失し、いかなる臨床症状も無い状態だ。
被せ物も壊すことなく、病気が治ったことに、患者さんも喜んでおられた。
専門医が行う「歯根端切除術+逆根管治療」は、「根の先を切って、膿を取るだけの手術」とは、全くの別物だとお分かりいただけるだろう。