歯根端切除術
次のような場合、歯根端切除術が適応症となります。
-
根管治療を行ったが、痛みや腫れが消えない。
または、レントゲンで根の先の黒い影(膿)が消えない。
-
過去に歯根端切除術を受けたが、再発した。
-
セラミックなどの被せ物が気に入っていて、外したくない。
-
太く、大きな金属の土台が入っており、除去すると歯が割れるリスクが高い
-
根管が曲がっていたり、詰まったり(石灰化)しているため、根管治療で治る可能性が低い。
根管治療を行うと、被せ物も必然的に作り直しをしなければなりません。費用的にも負担が大きくなりがちです。 歯根端切除術では、被せ物を外す必要はありません。
しかし、症例によっては、先んじて根管治療を行った方がいい場合もあります。
歯根端切除術とは
歯根端切除術とは、根管治療で治らない症例において 文字通り病気の原因となっている根の先端を切除する手術です。
歯根端切除術の歴史は古く、歯科医師なら誰でも知っている手術です。現在の術式において、この手術は根っこの先を切除するだけでは不十分であり、「逆根管形成」と「逆根管充填」を正確に行うことが、成功するための必須条件です。
しかし、日本では成功率が低い術式(根っこの先を切除するだけの術式)が、頻繁に行われているのです。このような古い術式の成功率は50%程度です。
次の「成功率が高い術式」で詳細を説明していますので、ご覧ください。
根管治療だけで、全てのケースが治る訳ではありません。以下の2つが主な理由です。
-
1歯の神経の形は非常に複雑で、根管治療で根っこの中の細菌を100%除去できる訳では無いこと。
-
2根管の外に細菌が繁殖し、感染の原因となることがある。(根尖孔外感染と言います)
成功率が高い術式
手術の全工程をマイクロコープやライト付き拡大鏡を用いた、拡大視野で行います。
歯根端切除術は1cmにも満たない非常に狭い範囲を扱う、とても繊細な手術です。特に根の先端の処理においては、裸眼で正確に処置を行うことは不可能です。
この術式における成功率は、およそ90%です。また、手術時間は60分~90分程度になります。
治療の流れ
-
1初診時に診察を行い、手術が適応かどうかの説明を致します
-
2歯根端切除術を行います。
-
3翌日に手術部位の消毒を行います 。
-
4手術から7日後に抜糸をします。
-
53ヶ月後、6か月後にレントゲン撮影、経過チェックをします。
-
61年後にレントゲン撮影し症状をチェック、治癒しているかどうかの確認をします。
歯根端切除術の流れ
(※1)専用の超音波チップで逆根管形成をする
根管の中の感染源を除去し、セメントを詰めるための穴を掘る工程です。
(※2)逆根管充填
掘った穴にセメントを充填します。生体親和性・封鎖性を持った専用のセメントを使用します。
歯根端切除術が失敗する原因
歯根端切除術が失敗に終われば、次は抜歯しか方法は無いと言われます。しかし、手術が次のような術式だと、再発する可能性が高いと言えます。
過去に受けた手術が失敗した場合(膿が再発した場合)でも、成功率の高い術式で再手術することで、歯を残せる可能性があります。
-
1マイクロスコープやライト付き拡大鏡を使用していない。
-
2逆根管形成、逆根管充填を行っていない。(根の先端を切除しただけの術式)
-
3逆根管形成時に専用の超音波チップを使用していない。
-
4逆根管充填時の止血が不十分だった。
-
5逆根管充填の不備。(セメントが硬化していなかったなど)
-
6根管内に腐敗物が残っている。
-
7感染歯質・根管外の感染が広範囲である。
アメリカ歯内療法学会の資料を参考に作成しています。
colleagues for excellenceのPDFへ